【2012年4月26日ニュース】大高正二氏810転び公妨事件第11回公判の状況


 2012年4月25日午後1時に、東京地方裁判所正門玄関2番交付所で配布されていた傍聴券についての抽選が行われ、40人中38人が抽選に当たりました。抽選に当たった傍聴希望者は、そのまま4階の東京地裁425法廷の前の廊下で、法廷が開くのを待ちましたが、開廷時刻の1時半の10分ほど前に、荷物預かりとボディーチェックが始まり、チェックを終えた傍聴希望者は法廷前の廊下で法廷が開くのを待ちました。しかし、警備職員が待機中の傍聴希望者に対して、官憲風の横柄さで、2列に並んで待つよう指示、少々列が乱れて、傍聴希望者が会話をしていると、割って入ってきて、列を保つように、うるさく指示しました。

 筆者も法廷入り口前で傍聴人に対して法廷が開放されるのを待っていましたが、開廷時刻の1時30分を5分ほど回っても法廷が公開されず、なぜ時刻通りに始まらないのかと怪訝に思っていたところ、入り口前に萩尾弁護士が駆けつけてきて、「いったい何をしているのですか、なぜ傍聴人が入廷しないのですか」と警備職員に尋ねました。どうやら、ぐずぐずして傍聴人を足止めしていたのは、警備職員のようでした。

 1時37分に、7分遅れでようやく傍聴人が入廷し、着席してから、多和田裁判長が「不規則発言、不審な挙動、録音機等の所持」などについて、「注意」をしてから、開廷となりました。

 まず多和田裁判長は、検事側の証拠の甲19号証、20号証について、何かを話し、これについて弁護側の意見を聞いてから、却下すると述べました。この証拠がどのようなものかは不明です。  次に多和田裁判長は、期日外の4月9日に弁護側が弁12号証を提出し、4月20日に被害者とされる裁判所守衛杉田氏の診察を行った三田病院に診察カルテを照会させるよう、裁判所に要請した事実を述べ、これに関する審理に入りました。

 弁12号証は、2月10日の第9回公判で証言した柳原病院の露木医師の意見書でした。多和田裁判長は、検事の了解のうえで、この意見書を証拠採用し、次に三田病院のカルテの照会を求めるかどうかについては、弁12号証の内容を見てから、照会の可否を検討すると述べ、弁12号証の提出を求めました。弁護側は、意見書を多和田裁判長らに提出し、更にその内容に関する説明を行いました。

 この意見書は、第9回公判で露木医師が証言し、それに対して検事側が後出しじゃんけん的に最高裁判所内の診療所のシノウラ医師の証人尋問を行ったので、その証言記録に関しての露木医師の医学的な見解を求めたものです。

 露木意見書では、シノウラ医師の証言に矛盾があり、またシノウラ医師の措置は医師法に準じていない部分が多いと指摘しています。

 シノウラ医師は頭部打撲は重篤な結果になる可能性があるので、専門医に診断してもらうように勧めたと証言しながら、診療費用が二重取りになるなどという、治療本来の要因とは異なる理由により、カルテを作らなかったと証言しているが、これは、重篤という判断と全く矛盾するものである。

 シノウラ医師が既往症について質問されたときに、「わかりません」と答えているが、これは異常である。医師として、まず既往症を調べるか少なくとも問診でそれを聞かなければならないはずである。

 このようなことから、実際にはシノウラ医師は杉田氏の「外傷」について、ほとんど大したことがないと認識していたと思える。

 三田病院の武藤医師の頚椎損傷の診断は、杉田氏の訴えだけに基いて書かれたものだが、杉田氏が精神科にも通院しているので、精神的な不安定さのために、そのような訴えした可能性もある。

というような内容でした。これらの説明を聞くと、杉田氏の頭部の負傷は真実ではなく、杉田氏が訴えた首の痛みは、杉田氏のもともとの持病によるものではないかと思えます。

 弁12号証の説明の後に、多和田裁判長は三田病院の杉田氏のカルテの照会について、これを行わないと述べました。即座に弁護側から異議が申し立てられ、刑事訴訟法第1条に「事案の真相を明らかにし」とあるが、多和田裁判長は真相を究明しようとしていないと批判しました。しかし、多和田裁判長は、批判にまともに答えようとせず、検事に意見を聞くと、検事は録音機のように「異議には理由がない」と発言し、裁判長は却下の決定をくり返し宣言しました。そのとき、傍聴人の一人が、その裁判長の態度を見て、思わず「なんていうことを」とつぶやきましたが、裁判長は「今発言した人は誰だ」と述べ、それに応えてなぜか嬉しげに警備服を着た裁判所職員が「あの人です」と一人の傍聴人を指さしました。多和田裁判長は「今発言した人退廷」と宣告、警備職員数人が猟犬のようにその傍聴人の席を取り囲み、傍聴人を法廷から連れ出していきました。

 その後、多和田裁判長は「これで証拠の取り調べを終わります」と述べ、かなり唐突に、検事に対して「論告をしてください」と言いました。これにこたえ、山本検事が立ち上がって、論告求刑を早口で読み上げ始めました。そのとき、大高氏が「もっとゆっくりと話してください」と発言し、検事の口調はすこしだけ、ゆっくりになりました。

 論告求刑の内容は、裁判所警備の行為をすべて正当化し、大高氏の裁判所批判をすべて問題行動で犯罪であると断定、裁判所職員の証言をすべて信頼できるとし、弁護側の反論や証拠、証言をすべて無視、あるいは根拠のないものと決めつけるもので、大高氏は人格に問題があり、「矯正」には多大の時間がかかるということだそうです。

 また、大高氏のように裁判所の職員の命令に絶対的に服従しない市民が増えると、裁判所の秩序が維持できなくなり、国益を害することになるそうです。

 求刑は懲役2年ということで、山本検事の論告は求刑を述べた直後に、突然、終了しました。

 多和田裁判長は次回の公判日程を6月13日午後1時半、場所を429号法廷と決め、弁護側の最終弁論と大高氏本人の陳述を行うとし、閉廷になりました。閉廷後、傍聴人が退出するときに、傍聴人の一人と警備職員の間にトラブルがあったようで、そこで退廷命令または構外退去命令が出されました。

 その後、大高氏、弁護士、傍聴人が報告会を開き、

  • 露木医師の意見書を証拠採用したのは、裁判長が早く終わらせたいからだ
  • 通常、カルテは検事側が提出するものである。カルテの照会を認めないということは、カルテに何か検事側(と裁判所)に不利なことが書いてあると思える
  • 判決は9月初めごろになるのではないか。
  • 公務執行妨害の通常の求刑は1年くらい、傷害がついた場合のそれは1年6か月くらい。今回の求刑2年は大高憎しの感情が追加されているのでは

というようなことが議論されました。大高氏は、求刑2年は想定内だと感想を述べていましたが、千葉興銀名誉棄損事件の執行猶予期間中であり、実刑になるとその分も加算されて即座に収監されることが予想され、厳しい状態です。裁判所が正常に機能していたら、検事側のあのようなずさん極まりない「立証」によって有罪になることは不可能なのですが、多和田裁判長はそういうことを可能にする裁判官だということです。というよりも、日本の司法制度がそういうものなのではないかというのが筆者の感想です。


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