【2010年11月7日主張】8月10日に何が起こったのか(裁判ウォッチャー)



8月10日に何が起こったのか



まだ確認できない大高さん逮捕後の状況

 11月2日にとつぜん逮捕拘束された大高正二さんの逮捕理由については、警察署に問い合わせをしても、まともに応えないので、正確なところはわかりません。何人かの関係者が警察署などに問い合わせて得られた断片的な情報をあわせると、大高さんが裁判所の職員に対して暴行を働いたという口実で、その事件の発生した日付が2010年の8月10日であったという筋書きが浮かび上がってきます。しかし、これが本当に丸の内警察署の逮捕容疑であるのかどうかは、今のところ確認できていません。

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高い弁護士費用

 大高さんはまだ弁護士を依頼していないようです。これも情報が入りにくい要因のひとつです。弁護士費用は安いものではありません。警察署や司法権力の一方的な都合で、根拠薄弱なままになんども逮捕拘留、あるいは起訴を繰り返されてしまっては、組織的な背景がなく、個人で活動している大高さんには、とても費用をまかないきれません。これが司法当局側の狙いなのでしょうか。

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8月10日の事件

 ところで、大高さんの逮捕容疑の真相は別にして、今回の逮捕劇により、2010年8月10日に大高さんと裁判所職員との間に起こったトラブルの詳細が明らかになりました。しかし、明らかになった事実を見ると、双方向のトラブルと表現できるようなものではありません。これは、裁判所職員による大高さんに対する一方的な迫害と言うべきものです。

 当日、大高さんは東京地裁か高裁かどちらかははっきりしませんが、あるジャーナリストと同行して、法廷を傍聴していました。ところが、法廷の廊下から、扉の窓を開けて室内を覗きみていた職員が、とつぜん、法廷の中に乱入し、大高さんを法廷から引きずり出し、裁判所の敷地の外に強制的に追い出しました。そのときの職員の人数は15人ほどであったと伝えられています。裁判所でこのような実力行使を行うのは、警務課という部署に属する専門的な職員で、当然、体力には自信のある人々であるはずです。

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携帯電話を巡る裁判所職員の嫌がらせ

 なぜ、このような乱暴なことをしたのかというと、大高さんが携帯電話を所持していることを、廊下から覗いていた職員が確認したからでということです。携帯電話の所持を口実に裁判所の建物から大高さんを追い出すという行為は、常軌を逸しているものですが、これにはそれなりの事情があります。以前から大高さんと裁判所職員との間のトラブルの種になっていることですが、大高さんは個人指名で携帯電話の持込を禁止されているのです。禁止の根拠は明らかでなく、禁止の責任者も誰であるか分かりません。いろいろな理由はあると思いますが、これは裁判所職員による大高さんに対する単なる嫌がらせであるとしかいえないと理解すべきです。

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携帯電話に関する裁判所の矛盾する措置

 2010年現在、携帯電話の普及率は非常に高く、携帯電話を持っていない人を探すほうが難しい状況です。そして、ほとんどすべての携帯電話には、カメラ機能がついています。東京地裁・高裁の正門には、裁判所内での撮影を禁止するという立て札が立っていますが、携帯電話のカメラ機能を使用すれば、誰でも簡単に裁判所内の撮影を行うことができます。もし、その可能性を問題にして、裁判所内ですべての撮影を厳密に禁止しなければならないのならば、携帯電話の持込を禁止するか、あるいはすべての入館者(あるいは法曹関係者を除く一般入館者)の携帯電話を入り口で預るという措置を行わなければなりません。

 そもそも、裁判所館内で撮影を禁止するという根拠がきちんと説明されていないのですが、その問題はおくとして、本当に裁判所館内での写真撮影が司法行為の実施に対して致命的な悪影響を及ぼすというのならば、すべての入館者の携帯電話を、裁判所が責任をもって、入り口で預るという措置を行うべきだということになります。ところが、そのような措置は行わず、実際には大高さんを個人指名して、携帯電話の持込を禁止し、大高さんが裁判所に入館した後も、職員が執拗に大高さんを追い掛け回し、監視しているのです。8月10には、大高さんは入館の前に同行したジャーナリストの知人に携帯電話を預け、入館してから受け取って、法廷内で何かの理由で携帯電話を操作していたということです。これを廊下から覗いていた裁判所の職員が見咎めて、開廷中の法廷に十数人で乱入し、大高さんを法廷から引きずり出すという大捕り物劇を演じたというのですから、これら裁判所職員の感覚はまともではないとしか形容できません。

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裁判所の秩序を維持するための二種類の権限

 以前から、大高さんは裁判所館内での撮影や録音の禁止に疑問を感じ、その根拠を何度も裁判所に問いただしてきました。これに対し、裁判所は昭和43年に最高裁判所が作成した「庁舎管理規程」を示して、その根拠だと説明しました。しかし、これは裁判所の内規であり、公開を前提にしている司法当局が裁判所に来館する人々を規制する法的根拠とはいえないのではないかと大高さんが聞いたところ、納得のいく説明はありませんでした。

 そこで、さらに問いただすと、裁判所といっても何らかの秩序を維持する必要があり、そのために自己管理する権限がもとより備わっているのであるというような抽象的な説明に後退し、それ以上の説明を避けるようになりました。ただし、一つ明らかになったのは、裁判所における秩序の維持の根拠には、二種類の異なる権限があるということです。まず、裁判所の館内全体に関する秩序維持の権限と責任は裁判所の管理部署、たとえば、事務局というようなところに属するとされます。しかし、この権限と責任の最終的な帰属は、裁判所所長あるいは長官になるのではないかと考えられます。次に、法廷内の秩序維持の責任と権限は、裁判所の特定部署ではなく、裁判長に属します。これは、たとえば、航海中の船内では、乗客や乗組員の安全などのための秩序維持の責任と権限が船長にあるというような道理の延長で理解できるものではないかと思います。

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裁判長の法廷管理権・警察権を無視する、責任者不明の「庁舎管理権」

 ところが、8月10日の事件についてこの原則を当てはめると、原則が踏みにじられていることが浮き彫りになります。百歩譲って、裁判所の責任部署が庁舎管理権を根拠に、大高さんを個人指名して、携帯電話の持込を制限している状況を前提にするとしても、開廷中の法廷に部屋の外から十数人の実力行使職員が乱入し、裁判を傍聴している大高さんを有無を言わさずに引きずり出すという行為は、裁判長の権限の下に行われたものとは認められません。なぜならば、大高さんに対して、個人指名をして携帯電話の持込を禁止しているのは個別の裁判官ではなく、裁判所の庁舎管理を管轄する特定の部署であり、裁判官は法廷内で傍聴人が携帯電話を持っていることを確認しても、そのことだけで退廷を命ずることはありません。少なくともそのような例は聞いたこともないし、単に携帯電話を持っていることが退廷理由になるとするのならば、実質的に誰も裁判の傍聴をすることができなくなります。

 この問題については、当日の状況をもっと詳細に調査し、どのような性質の法廷で、裁判長が誰であり、大高さんに対する攻撃的な実力行使の意思決定と裁判長の指示がどのような関係であったのか、実力行使の命令者は誰で責任者は誰だったのかを明らかにする必要があると思います。

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70歳に近い大高さんに襲い掛かった十数人の職員がどうやって暴行されたのか?

 さて、8月10日には、このような無法としか表現できない現象が起こり、大高さんが裁判所から追い出されるという悲惨な結果になりました。もしこの事件が、大高さんの暴行罪・傷害罪による逮捕容疑になっているとすると、これは評論に値しない、めちゃくちゃででたらめな権力行使としか言いようがありません。十数人の屈強な警務職員が70歳に近い大高さんを強制的に部屋から引きずり出し、建物の外に放り出すという乱暴な行為を行った後に、暴行されたとその職員が訴えたとすると、それはどういう人たちなのでしょうか。大高さんはとつぜん自分に襲い掛かる十数人を相手に、対等に闘うことができるスーパーマンなのでしょうか。この事件については、同行したジャーナリストがすべてを目撃していて、大高さんが暴行を働いていないことが確認されていますが、しかし、そのような目撃が不要になるくらいに、そのときの状況を容易に推察できるのではないでしょうか。日本の裁判所は、自儘な愚連隊のような人々の恐怖の論理によって、制圧されているのでしょうか。

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